平屋は暑いをどう解消するか(抜本的な暑さ対策を施した平屋の家づくりを実現するために)
1)二階が暑いという経験
2階建ての場合、1階に比べて2階のほうがかなり暑いということは、皆さんご存じでしょう。実際に経験なすった方も多いことと思います。
天井(あるいは屋根)の断熱は、壁の断熱よりもかなり強化されているはずなのにです。
なぜ2階が暑くなるのでしょうか。
まずは、その原因をきちんと把握しましょう。
2)暑さの根本的な原因は赤外線
暑さの根本的な原因は、太陽から降り注ぐ赤外線です。
赤外線とは780~10万nm(ナノメートル)の波長域の光のことで、強い熱作用があるという特長があり、このことから赤外線は熱線とも呼ばれています。
太陽から降り注ぐ赤外線の量によって気温が左右され、赤外線の量が少なければ気温は下り、赤外線の量が多ければ気温は上昇します。
そして、赤外線は波長の長さによって近赤外線、中間赤外線、遠赤外線の3つに分類されます。
3)赤外線を多く受ける面
グラフは、東京における夏至の直達日射量を表したものです。
グラフから読み取れるように、圧倒的に水平面が受ける日射量、つまり赤外線量が多いのです。
ということは、建物内の暑さの原因の多くは、上から押し寄せてきているということです。
そして、このことをしっかりと認識することが、平屋は暑いを解消するための第一歩です。
4)熱移動の3要素
熱は3つの要素のいずれかで移動します。そして、それは「対流」「伝導」「輻射」と呼ばれており、これを熱移動の3要素(3原則)といいます。
対流は空気などが動くことで熱が移動するもので、対流による熱移動を利用している代表的なものが、ドライヤーやエアコンです。
伝導は物質と物質が触れることで熱が移動するもので、伝導による熱移動を利用している代表的なものが、アイロンや湯たんぽです。
輻射の代表的なものは、太陽から降り注ぐ赤外線です。
赤外線自体は熱くありませんが、赤外線が様々な物質に当たることで、その物質の分子を高速に振動させ、熱を発生させます。
その原理を応用した調理機器が、電子レンジです。
5)上から下に移動する熱の種類
熱移動の3要素において、上から下に移動する熱の割合はどうなっているのでしょうか。
上から下へ熱が移動する場合の93%は、輻射熱(放射熱)が占めています。
上から下への熱移動のほとんどが、輻射熱(放射熱)によって起きるのです。
ということは、輻射熱(放射熱)を制せずして、暑さ対策は成り立たないということになります。
6)屋根の直下階だから暑い
ここまで読み進めていただいた方は、もうお気づきのことと思います。
2階建ての2階が暑いのは、2階だからではなく、屋根の直ぐ下の空間だからです。
平屋建ては、全ての空間が屋根の直下階(最上階)です。
これが「平屋は暑い」と言われる所以です。
2階建てであれば、1階という2階に比べれば涼しい空間が存在増します。
しかし、平屋は全ての空間が屋根の直下階となるので、そのような避暑的空間が存在しないのです。
だから、平屋建ての場合は、より暑さ対策が重要なのです。
7)断熱材と輻射熱の相性
断熱材はそう呼ばれてはいますが、熱伝播遅効型熱吸収材料です。
断熱材と呼ばれている名称から勘違いされ易いですが、決して熱を断つことが出来る材料ではありません。
熱を吸収することで、熱の伝わる時間を稼ぐ、遅らせるという材料なのです。
そして、断熱材が撥ね返すことの出来る輻射熱は、10%程度に過ぎません。
下方向への熱移動において93%を占める輻射熱(放射熱)のなんと90%を吸収し、やがてその熱を放射します。
これこそが、天井(屋根)の断熱を強化しているにもかかわらず、屋根の直下階が暑くなる直接的な原因です。
8)建物内が熱帯夜になる原因
断熱材は熱伝播遅効型熱吸収材料、つまり蓄熱材です。
断熱性能を上げるということは、吸収する熱量を増やすということであり、熱が伝わるまでの時間を稼ぐということに過ぎません。
決して、熱を断つわけではないのです。
そして、吸収する熱量が多いほど、陽が沈んでから冷めにくいということとなりますので、屋内の熱帯夜化を助長するということにもなってしまうのです。
9)輻射熱に効果を発揮するもの
平屋の家づくりにおいて、冷房に頼らない暑さ対策を実現するためには、暑い時期に上から押し寄せる大量の輻射熱に対処することが必要不可欠であることは、ご理解いただけたことでしょう。
そして、それは断熱材では難しいことも学んでいただきました。
では、どんなものが輻射熱に効果的なのでしょうか。
表から「銀」「金」「アルミ」の反射率が高いことが分かります。
しかし、銀と金は高額なため、アルミが輻射熱を撥ね返すための素材として、使われるようになってきたのです。
そして、それは一般的に遮熱シートと呼ばれています。
10)反射率にこだわる
アルミ遮熱シートにも様々な種類がありますが、出来るだけ輻射熱の反射率が高いものを選択しましょう。
なぜならば、反射率1%は熱抵抗値に置き換えると15%程度といわれていますので、例え反射率が数%の違いであっても、その違いは大きなものとなるからです。
アルミの反射率は92.45%(アルミ金属国際基準の認定値)です。
ですので、高純度アルミ箔を表面に加工しただけでは、これを超える反射率を得ることは出来ません。
しかし、高純度のアルミ箔に光沢度(光沢度とは純分率と研磨率からなります)を加えることで、更に反射率を向上させることが可能です。
最も高い反射率を実現したアルミ遮熱シートであれば、なんと反射率は99%に達しています。
11)高性能アルミ遮熱シートの効果
では、アルミによる遮熱シートは、どの程度の効果があるのでしょう。
写真は、高性能断熱材で覆った箱と高性能遮熱シートで覆った箱の中にそれぞれ温度計を設置し、ストーブで至近距離から数時間熱をあてたものです。
箱の中の温度はいかがでしょうか。
断熱材は「熱伝播遅効型熱吸収材料」ですので、吸収出来る熱量を超えれば、箱の中に放熱が起こります。(蓄熱中にも放熱はしています)
これにより、断熱材の箱の中の温度が大きく上昇することとなるのです。
一方で、遮熱材は反射材であり、熱を撥ね返します。高性能な遮熱材であればほとんどの熱を撥ね返しますので、箱の中が影響を受けにくくなるというわけです。
ストーブを真夏の太陽、それぞれの箱を家と想定してみるといかがでしょうか。
これが高性能遮熱シートの効果です。
12)平屋は暑いの解消方法
暑い時期に上から押し寄せる大量の輻射熱が建物内の温度上昇の最大要因であり、輻射熱の浸入(輻射熱の熱移動)を防ぐのに効果的かつ実用的なのはアルミ遮熱シートということが判明すれば、対策はおのずと見えてきます。
そうです、屋根面に高性能な遮熱シートを施工することが、平屋は暑いを解消する最も効果的な対策となります。
なぜなら、屋根から移動してくる輻射熱を撥ね返すことで、小屋裏の温度上昇を大幅に抑制し、それに伴って天井裏の分厚い断熱材が蓄熱することを防げるからです。
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